松村上久郎、asanomi  北海道で活躍するクリエイターインタビュー

松村上久郎,asanomi

イラストレーター 松村上久郎

北海道大学を卒業後、お父様の会社に勤められながら、夜遅くまで残り絵の勉強を続けてこられた上久郎さん。
数年後、小さな頃から好きだった、イラストを描くお仕事に絞る決意をされ、決めた翌日に、イラスト技法書出版のお話が舞い込む。

 

陶芸作家asanomi

陶芸作家 asanomi

十年ほど前、お友達に誘われて陶芸教室の体験へ。
それがきっかけで、今ではご自身の工房を持ち、制作活動を続けている。

穏やかな色合いの、小さな小さな花器が人気。

 

お母様と息子さん、ご家族で作家活動をされているお二人のご自宅へお招き頂き、asanomiさんが作られた素敵な器で美味しいお料理をいただきながら、とても柔らかくて優しい雰囲気のお二人に、お話をお伺いさせていただきました。

松村上久郎,asanomi

「from robot to rabbit」その間にあるものは…?

上久郎さん(以下、上)>私の作品には一応「ロボットからうさぎさんまで」というコンセプトがあるんです。英語にしたらちゃんと「from robot to rabbit」で韻を踏んでいるんです。結構かわいいものも描きたいんですね。でもいつも使っているペンは、カチカチっとしたカタイ描き方をすると威力が出るペンでもあって、それにぴったりくるのはロボットなんですね。硬いものから柔らかいもの、あるいは男性的なもの、女性的なもの……ってこう、なんかちょっと二つ違うものを合わせて、ごちゃごちゃっとして、なんかかわいいねっていう雰囲気を出したい。

>まさしく。

上>どっちか片方だと納得できない。理系で進学したということもあって、数式や物理の公式など理系的な、男性的な要素も描きたいんですね。理系=男性的なものっていうと、ちょっと偏見かもしれないですけど。通った工学部のクラスには、男性5、60人に対して女性は二人しかいなかったですし(笑)。なんかそういう男性的なものもほしくて、絵の中になんとなく偏微分の方程式を描いたりとか、かっこつけたりして。かと思ったら、それ飽きたから次はうさぎ、っていう調子で描いているんです。

>初めてお伺いしたとき、「ロボットとラビット」の間になにがあるんだろうって思っていました。

松村上久郎さん作業風景

上>実は私もよくわかっていないんです(笑)。両方とも好きで、両方が混ざったときに出てくる世界観というのが、しっくりくるんですね。ファンの方からは、世界観好きですってよく言われるんですけど、でも実を言えば、私自身は世界観にピンときていなくて。それこそ一、二年前に描いた絵をみると、あ、こんなの描いてたんだってそこではじめて気づくくらいで。描きたい世界観にそこまで確信があるわけでは無いんです。それこそロボットとうさぎの間で、私自身が冒険したいですっていう。掘り起こすっていうか。それこそ私がその間になにがあるんだろうって、私が知りたいんです。

>なるほど。

上>私が知らないので、一緒に探してみてください。っていうコンセプトです。

>想像させられますよね。

上>それこそyoutubeで生配信を始めたのも、そのあたりを他人と共有しようという企みがあってのことで。ふつう絵は完成品しか見ないですけど、完成までの道のりをみんなと一緒に共感できたら、一体感、臨場感、その現場に居合わせたぞっていう、ある種の快感が絵作りの中でできたら、完成品を受け取るだけのことから次のステップにいけるんじゃないかと。オーディエンスを囲って、ロボットとラビットの行間を埋めていきますということでもあるんです。みんなで埋めようっていう。

お客様が真剣に選ぶ姿に応えたい、刺激と熱意

>お名前の由来は、どこからきているんですか?

上>名前は本名のアナグラムですね。大学時代の先輩に考えてもらいました。

>随所に理系を感じますよね。笑
>asanomiさんも、麻子さんが作られることからつけられたんですか?

asanomiさん(以下、asa)>そうですね、麻子の実っこで「麻の実」。木の実のように…果実が実るように作れるといいなぁという思いから。

>ローマ字にされたきっかけは…?

asa>HPをつくったり、ショップカードを作ったりしているうちにいつの間にかローマ字になっていました。

>作られてるものと、お名前ですとか雰囲気が、とてもまとまっていらっしゃる印象です。
>選ばれている色ですとかも、とてもasanomiさんらしい色合いですよね。

asanomiさんの作品

asa>最初はブルー系だったんですよ、ブルーや白が好きなので。ある日お客さんからピンクが欲しいっていわれて、じゃあがんばって作ってみましょうかと。新しい色を出すときはどきどきです。場所によって好まれるものが違うと思うので。手にとってくださるのは、30代から40代くらいの方が中心なんです。小さなお子様連れの方がご主人やお子様たちと楽しそうに選んでくださっています。微妙な色の違いや形の違いに真剣にこだわって選んでくださる…それが私にとってすごくうれしい刺激になっています。

>色の中では、特にお客様に選ばれているものはあるのでしょうか。

asa>一番のロングランは「そばかす」という薪の灰で作っている釉薬です。自然な感じが好まれているのかもしれません。ブルーのバリエーションを選ばれる方も多いかもしれませんね。

>この土を選ばれた理由は…?

asa>土は信楽を3種類選んでいます。私の先生は有田で修行された方で薄作りなのです。先生の使われている薄く柔らかく延びる土に似た土を探し、ようやく自分に合う土に巡り合えました。

asanomiさんの陶芸作品

今自分ができること、つくれるものを、届けること

>お話をお伺いしていて、こんなにお取扱いもされているのに、常に自信がないと仰られたのが、なぜだろう…と感じました。

asa>いつまでたっても、これでいいでしょうか?っていう感じです。手にとってもらえて、そこでようやくほっと胸をなでおろすことができます。いま自分がやるべきこと、できることを届けられたと思っても…すぐに大丈夫かなと…いつも不安ですね。

>常に謙虚でいらして、ひたむきに向き合われているからこそ、作り続けられるし、お客様からも求め続けられていらっしゃるように感じます。

asa>人と比べるということができないので、いつまでたっても安心はないですね。でも心のどこかで、今回はだめでも次はがんばろうっていう思いはあります。作り続けることが大事なことですよね。どれも同じように見えるという方もいると思うんです。でも、一つ一つ違うんですよ・笑。一つ一つ違う気持ちで作っています。いつも新しいものを作ろうという気持ちで作っています。飽きるということはないですね。

asanomiさんの作業風景

「へたくそ」に描く、人の心を掴むコツ

>子供の心に戻って…というのはなかなか誰でもできることではないと思います。なにかそんな気持ちを忘れない、コツのようなものはございますか?

松村上久郎さんの作業風景

上>わざとへたくそに描くんです。子供のときにやっていたみたいに。子供のときはうさぎの耳の長さが左右で違うことも気にしないですし。リュックの中身まで透視して描いたりとか。リュックの中に入っているお弁当は外からは見えないだろうとか、そういうことは子供は言わないですよね。今描きたいものをパッと描く。初期衝動で描くというか。
言い換えれば、かっこつけない。その方がめんこい感じが出る。線も曲がっていていい。はみ出たらはみ出たで、その線を利用して。黒インクぶちまけたなら、これは宝の地図ということにして、大事なところがもみ消されたという設定にしてもいい。
皮肉なことですが、ちゃんと描けばちゃんと描くほど、その絵は人の注意を惹かないんです。へたくそな方が、なにこのへたくそな絵って足を止める。その匙加減が難しい。絵の練習を始めた小学生の頃は、今より真面目に描いていた。マネキンを見ながらとか。じゃあそういう真面目に描いた絵をSNSにあげて、いいねとかリツイートがつくかっていうと、つかない。「マネキン」では弱いということ。正しいけれど残酷。
手を抜くのとは違うけど、へたくそに描く。へたくそなんだけど、妙に人の心を掴む。そんな絵が描けたらいいな、と思いながら制作しています。

松村上久郎,asanomi

上>なので、絵を見た人にこういう気持ちになってほしいっていうのは、割とはっきり思い描きながら制作しています。うさぎ描くなら、ああ、かわいいうさぎですねって。自分が想いながら描く。わざとうさぎの耳を長く長く伸ばして、なにこれ長すぎじゃんって、一目見てわかるように描く。
描いているとき自分自身がワクワクしているというか、惰性では描かないように。自分の心に楽しみをフィードバックしながらやる。飽きたときは飽きたなって正直に言うようにしています。これはもうみんな見たから飽きるだろうとか。そういう飽きるというポイントだけは敏感に察知して、避けて。

>ものづくりをされるというのは、自分を整えることがとても大切ですよね。

上>そうですね。描いてるときの気持ちは完成品に出ちゃうので。そこをすごく気を付けています。仕事だから、締切近いから急いで描いちゃおう、だと何も面白くないものができてしまう。
そうではなくて、一本線を引くのが楽しいですとか。うさぎ一匹描くのが楽しいですとか。それこそ5歳に戻ってから描く。そこで初めて絵がキラキラしてくる。鑑賞に堪えうる作品になると思っています。

生活をデザインすることで生まれる、ライフスタイル

>釧路で創作活動を続ける動機には、なにがあったのでしょうか?
上>まず私が出不精なんですね(笑)。都会の人の多さも苦手ですし。ただただそっちへ行きたくないという。加えて思うのは、若い人がみんな、都会に出て行く流れが単純に気に入らないんです。みんな都会に何か求めて出て行く。地方は人がいなくなる。でも今はネットの時代ですから、実家で全部済むように暮らしをデザインすることは、地方に住む人間でも十分に可能なはずです。

松村上久郎さんとasanomiさんと作品

若い人たちがそれを積極的に実現するなら、地方は再び若返る。両親が年を取ったら荷物を持ってあげて、介護が必要なら介護してあげて。運転ができないなら代わりに運転してあげて……っていう、「当たり前」の循環がそこで復活する。実家には両親が暮らしているはずですからね。若者全員が実家で開業する…というのは極端な例ですけれど。今このネットの時代で、若者があえて積極的に「実家で全部済む」ように自分の生活をデザインすれば、高齢化社会の問題も全部片付くだろうと勝手に思っています。
で、私自身は、自分のこの暮らしがある意味でモデルケースになったらいいなって思うんです。私はまだまだマイナーなんですけど。地方だけど、地方にいながら全国出版のお仕事などもいただけて。そういうケースがもっと増えていけば、大学を出て会社に就職するだけが道ではないという雰囲気が若い人たちの間で更に高まっていくはず。もちろん個人でやるというリスクはあるけれども。ネットの無い時代と比べたら、かなりイージーな時代。自分で好きなことをやれる時代。都会で既存の会社に就職して、あわててローンを組んで一軒家建てるんじゃなくて、実家で開業して両親や家族を守りながら穏やかに暮らす。そういう流れがもっと主流になっていったら、私としてはとても気味がいいです(笑)。そうした時代が来るのは今後10~20年の話かもしれませんが、(やれブラック企業だ、老老介護だ、というニュースを聞いていると)もういいかげん来てほしいなとも思います(苦笑)。とにもかくにも、こういう人もいるんだというのを知ってもらうことにも(地方で仕事をするという)意義があるかなと思っています。

松村上久郎 HP
http://www.nanmo-nanmo.com/m.kamikuro/song_cun_shang_jiu_langHP.html

asanomi HP
http://asanomi.net/asanomi/home.html