セレクター紹介 - 小西 由稀

セレクター紹介

フードライター

小西 由稀 YUKI KONISHI

室蘭市に生まれ、18歳まで過ごす。短大卒業後、札幌の出版社で勤務。
現在はフリーランスのフードライターとして、さまざまな媒体で北海道の魅力的な食について発信している。
生産者や料理人を取材するときの信条は「どんな人にも思いがある」。つくる人の心に寄り添い、その思いを丁寧にすくいあげることで紡がれる文章は、ただのグルメ情報ではない、食と人の物語。
著書に『おいしい札幌出張〜45の美味案内』『おいしい札幌出張2』『食のつくりびと〜北海道でおいしいものをつくる20人の生産者』がある。

いい話を聞いたら人に教えたい

私の仕事は、伝えること。
就職活動では出版業界と放送業界を目指していたので、漠然とながらも、伝える仕事に魅力を感じていたのだとは思います。
ただ当時はぼんやりとした思いしかありませんでしたが、実際に書いて伝えるという仕事をする中で、「やはりこういう仕事をしたかったんだ」と、確信を持った感じですね。
いい話を聞いたら人に教えたくなりませんか?
きっと誰もが、少なからずそういう気持ちを持っていると思うんです。自分が聞いて「いいなぁ」という話を共有して、みんなで幸せに、楽しくなれたら…。そんな思いが私の根底にあります。

札幌の出版社でライターのキャリアをスタートさせ、多くの取材を重ねてきました。
独立してからは、さらに食にかかわるお仕事を多くいただきました。種蒔きから収穫まで生産者の姿を追ったり、船に乗せてもらい漁の取材をしたことも。飲食店はさまざまなジャンルの料理人から、料理に対する思いをうかがってきました。
そのうち、仕事のほとんどが食に関する依頼になったため、肩書きを「フードライター」に改めました。今から15年前くらいのことです。

私は、基本的に食べることが大好き。おいしいものがあると幸せを感じるタイプです。
なので、私にとってフードライターは、趣味と実益を兼ねた仕事といってもいいかもしれません。

「食の情報をどうやって得るのか?」と聞かれることがありますが、好きなことって、意識しなくても自然と情報が集まってきませんか?
これまで仕事で培ってきたネットワークがベースとなり、食べることが好きな人たちと自然と繋がり、情報交換をしています。
やはり、おいしい情報、面白いお店、注目の生産者や料理人など、「いいなぁ」と思う食の話を共有しています。“おいしいもの仲間”は、今や全国に広がっています。

小西 由稀様インタビュー

どんな人にもある思いをすくいあげる

仕事での「伝える」は、食材や料理、店舗情報を単に紹介するのではなく、その背景にある人の思いを紹介したい。そう思っているので、つくり手の気持ちが見えてくるような取材を心がけています。

おいしいものの向こう側には、生産者や料理人の努力や葛藤、工夫、挑戦、喜びなど、さまざまな思いがあることを、取材を通して感じてきました。その思いがあるからこそ、おいしいものが育まれると思っています。
たとえば、新しい農法を試みているとか、ユニークな調理法を実践しているとか、特徴的な事柄は取材をしやすい。
ですが、日々考えながら黙々と行っている仕事について、他人に説明するのは難しいものです。話すのが得意な人の方が少ないと思います。
多くを語らずとも、秘めている思いや考えは必ずあるはず。その部分にふれたいし、そこを書きたい。読者にも伝えたいと思っています。

とはいえ、頭や心にあることを口に出してもらうのは、簡単ではありません。
相手が話しやすいように、取材とは別な話をして場を和ませたり…ということもします。
イエスとノーで答えられる質問はしないで、その人が心の中にある思いを取り出してこれるような質問を投げかけて、答えを待つこともあります。
人生経験を積んだからこそ、若いころよりも人の思いに寄り添えるようになったのかな、と思います。




ライターとしての原点

つくっている人の思いを大切にしたい。原点にあるのは、子どもの頃の経験だと思っています。
私は、室蘭の寿司屋の娘なのですが、今でも覚えているのは、父がイカの皮を丁寧に剥いていたり、調理場に大きなマグロの頭があって驚いたりと、食が身近にある環境で育ちました。

そんな中で、子ども心にも不思議だなぁと思っていたのが、ウニ。
ほかの季節は板ウニを使っていましたが、冬になると銀のバケツに入ったウニが魚屋さんから届けられるんです。
板とバケツの違いが面白くて、父に聞いてみると、室蘭のウニの漁期は冬。バケツの中には剥きたてのウニが塩水と一緒に入っていたんですね。
40年くらい前の話ですが、今でいう「塩水ウニ」の走り。ものすごく甘くておいしかった!
なぜ季節で仕入れるネタが違うのか、その産地を選んだ理由はなぜかなど、理解できるようになったのはこの仕事をするようになってからです。
父はもう亡くなりましたが、いまなら聞いてみたいことがたくさんありますね。

トマトをスライスしただけでも、それを調理しても、トマト料理はトマト料理です。
興味があるのは、その料理人は、なぜその産地のトマトを選んだのか、なぜその生産者のトマトを選んだのか、そのトマトを使った料理で何を表現するのかということ。

もちろん、その料理がおいしいことが大前提ですが、ひと皿に紡ぐまでのストーリーをうかがうのが、とても楽しみなのです。
北海道は生産地と消費地が同じ大地にあるので、双方の思いにふれる機会が多いことが、北海道でフードライターを続けている醍醐味です。
また、北海道は生産者と料理人の距離が近いので、互いの現場を見に行ったり、食材や料理を食べ、意見を交わし、二人三脚でより良いものを目指しているケースが増えています。
今の北海道の食のシーンは、取材をしていてものすごく面白いですし、魅力を感じますね。


小西 由稀様インタビュー

「おいしいもの仲間」からの広がり

「北海道くらし百貨店」に推薦した商品は、仕事で出合ったものばかりではありません。基本的には、普段から普通に食べているものです。
たとえば「トマスコ」は、大好きな東川町の道の駅で偶然に見つけました。
いま、全国でご当地タバスコが流行していますよね。瀬戸内には「レモスコ」なるものがあり、九州には有名な「ユズスコ」がある。北海道にはないのかな…と思っていたところ、「トマスコ」に出合ったのです。
トマトの酸味と風味がしっかりあって、ちゃんと辛くて、おいしいんです。
パスタ料理はもちろん、カルパッチョ、アヒージョ、ザンギにもちょい足しのアクセントとして便利ですよ。

特にいいなと思ったのが、国産の有機トマトと唐辛子を使っていること。
有機農業を志す生産者も増えつつありますし、オーガニック食品へのニーズが高まっているので、時代にマッチした一品だと思います。

おいしいもの仲間が教えてくれて、出会った商品もあります。
「みよいさん家のとっても甘い有機かぼちゃ」は、その一つ。これは、有機栽培されたかぼちゃを追熟させ、ペースト状にしたものですが、糖度が20度以上あって、濃厚で深い甘さが特長です。
牛乳とお塩を足せば、かぼちゃのポタージュになりますし、切り分けて衣を付けて揚げれば、かぼちゃコロッケのできあがり。
いろいろな使い方ができる優れものです。しかも、常温で保存できて持ち運びやすいので、お土産に重宝しています。

これを薦めてくれたおいしいもの仲間は、みよいさんの農園にまで連れて行ってくれました。
同じ畑で同じ作物をつくり続けると、土壌の養分が偏り、病気や発育不足になることがあります。そのため、輪作するのが一般的です。
でも、みよい農園では、何十年も同じ畑でかぼちゃを育てています。そのためにしている土づくりやさまざまな工夫について、お話をうかがいました。

生産者や料理人の思いを知ると、よりいっそうおいしさを感じられますよね。
これからも、現場でうかがったエピソードを交えながら、つくり手の思いをみなさんに伝えていきたいと思っています。